プロジェクトストーリー

新幹線ツアー・ダイレクト英語版

東海道新幹線の座席と宿泊施設が予約でき、同時に決済までネット上で完結する「新幹線ツアー・ダイレクト」。その特性は訪日観光客のニーズにもかなうとの考えから立ち上げられたのが、「新幹線ツアー・ダイレクト英語版」のサイトだ。観光立国を目指す日本では、今後、インバウンド(訪日観光)需要の喚起にさらに力を入れていくことになる。「新幹線ツアー・ダイレクト英語版」は、JR東海ツアーズにおけるインバウンド施策の柱となっていくだろう。その立ち上げに至る取り組みをご紹介したい。

背景と意図

2012年秋、営業部の嶋田孝雄に対して、あるミッションが下された。"新幹線ツアー・ダイレクト英語版サイトを開設せよ──"
「JR東海ツアーズは国内旅行がメインの会社。英語版サイトのイメージはまったくなかったから、とにかく驚きました。そして、果たして自分にできるかどうか、不安が先立ちました」
2020年の東京オリンピック開催に向けて、ますます増加が期待される訪日観光客。今後は観光客のみならず日本に暮らす外国人も増えると予想される。こうした人々の旅行需要は、大きなビジネスチャンスである。
しかもSHINKANSENやKYOTOは海外でも通じるキーワード。東海道新幹線と京都に強いJR東海ツアーズが、インバウンドの世界でも存在感のある会社となる好機だ。
その点において、ネット上で東海道新幹線の座席と宿泊施設の予約、さらには決済まで完結する「新幹線ツアー・ダイレクト」は、海外からの観光客にとっても利便性が高く、必ず大きな需要が取り込めるはずだ。
そうした目論見のもとで、このプロジェクトは立ち上がったのである。
指示を受けた嶋田はこう考えた。"今の日本語サイトを英語化すればいいだろう"と。だが、そこには予想外に大きな壁が立ちふさがっていた。

構築と課題

嶋田はもちろん、JR東海ツアーズにとっても初の試みとなった外国語サイトの構築・運用。嶋田は関係者と打ち合わせをして課題のあぶり出しを行った。
「文字通り手探りで進めていきましたが、想定外の課題が次々と浮かび上がってきました」
例えば"JR Tokai Tours"という社名は日本人ならすぐにJR東海ブランドを想起するが、外国人にとっては"JR=ジュニア"だ。そのため「JR東海グループの旅行会社」であることをしっかりと明記することにした。
また、日本人と外国人の感性の違いもあり、イメージロゴも広告代理店の協力を得て数十通り作成し、外国人がイメージしやすいものを試行錯誤しながら決定。
サイト上でカード決済を行うために、日本の法律に準拠していることを明示しつつ、誤解が生じるような表現がないか、リーガルチェックを含めて専門会社と慎重に進めた。「最終的な確認を行うために、20数年ぶりに英和・和英辞書を手にとって作業しました」と嶋田は笑う。
さらに、サイトを見た外国人からの問い合わせに対応できるよう、外国語専門のコールセンターに対応委託も行った。
このように内外の関係者の協力を仰ぎながら一つひとつ課題を乗り越え、嶋田たちは一番需要の多い「東京発・京都着の商品」設定からスタートを目指していった。

準備と展開

「新幹線ツアー・ダイレクト英語版」のカットオーバーは、2014年4月1日と決まった。これに向けて、チケットをお客様にお渡しする窓口である支店でも準備が進められた。その対応を振り返るのは、東京支店の樋口真美である。
「近年、海外からのお客様が増えてきたという実感はありました。東京支店では、誰もが一日一回は外国人のお客様を応対しているほどです。そこにはやはり言葉の壁がありますから、列車の予約や宿の手配など、ご案内にはかなりの時間がかかっていました。その点『新幹線ツアー・ダイレクト英語版』ならば、既にサイト上で決済も済んでいるため、窓口ではチケットをお渡しするだけです。お客様にも私たちにもメリットあるサービスとして、期待していました」
むろん、いくら手渡すだけとはいえ、不慣れな外国からのお客様へのご案内は必要だ。社員の英語スキルには個人差があるため、何ができるか知恵を絞った。
「そこで、ご利用方法や時間の変更はできないなどの注意事項を英語で簡潔にまとめたA4サイズのシートを用意しました。このシートをお客様にご覧いただきながらていねいにご説明するようにしました」
また、チケットお渡しの専用窓口を用意したり、英語での店内表示を設けるなど、きめ細かな準備も行った。こうして支店サイドでも、着々と受け入れの準備が進められていったのである。

開始と展望

そして迎えた2014年4月1日の「新幹線ツアー・ダイレクト英語版」のカットオーバー。だが最初の受注が入るまで1ヵ月を要するなど、立ち上がりは拍子抜けするほど静かなものだった。「このまま1件も申込みがなかったらどうしようと気が気ではなかった」と嶋田は苦笑する。
ようやく第一号の受注があった時は、東京支店でのお渡しの際に、お客様に感謝の気持ちを込めてお礼を述べるとともにお話を伺った。"日本人の友人が勧めてくれたので利用した"とのことだった。
「以来、ご利用のお客様にアンケートを取っていますが、日本の友人に教えてもらったなど、クチコミで知ったというケースが多いようです」(樋口)
もちろんサイトをカットオーバーして終わりではない。英語サイトへのリスティング広告の表示、検索キーワードの変更、リムジンバスやホテルへのチラシ配布など、嶋田はサイト告知の手を打っていった。こうした試みは現在も継続中で、嶋田としては「まだ始まったばかり」という感覚だそうだ。また、訪日観光客だけでなく、日本に長期滞在中の外国人も大きなターゲットと考えており、さらなる認知度の向上に取り組んでいく考えである。
「窓口で外国からのお客様につたない英語で説明していると、その一生懸命さに好感を持たれるようです」と樋口。こうしたコミュニケーションも、「新幹線ツアー・ダイレクト英語版」の価値を高めていくことにつながるだろう。
2014年10月には出発駅(品川駅・新横浜駅)、着地エリア(大阪・名古屋)を追加設定。さらに、2016年2月からは上り列車についても利用可能になった。訪日観光客2,000万人を突破しようとしている今、「日本を旅するなら"新幹線ツアー・ダイレクト英語版"が定番」という時代を目指してより良いサービスを追求し続ける。

嶋田 孝雄 Takao Shimada

営業部 営業企画二課
2006年入社/経営法学科卒

前職も旅行業。東海道新幹線という強みを持ち、パッケージ旅行中心の展開というJR東海ツアーズの営業戦略にポテンシャルの高さを感じ、入社を決めた。

樋口 真美 Mami Higuchi

東京支店 営業課
2008年入社/社会学部社会学科卒

小さい頃から旅行が好き。JR東海ツアーズもよく利用しており、JR東海の京都キャンペーンの印象もよかったことが志望のきっかけとなった。現在育児休職中。

実施と成果


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